第20回 一歩進んで「考える人」
4月の上達コラムでは、世界の超一流のギタリストの右手のフォームを紹介した。記事を読んで自分の演奏に取り入れようと自分なりに工夫しながら練習に取り組んでいる人がいる。やってみて「なるほど」と思ったからという。「なるほど」と思うには、実際に一歩を踏み出してやってみる必要がある。踏み出しさえすれば、不思議なことだが勝手に頭が考える。
・なるほど素敵な音だ。
・どうして今までと違って聞こえるのだろう。
・弦に触れる指の角度はどうなっているのだろう。
・このタッチを継続するには、楽器を保持する姿勢はこれでいいのだ
ろうか。
・曲にするとこのフォームで上手く弾けるのだろうか。
・難しいが、そこに向かう価値があると決め努力してみよう。
等など、考えることは際限なく湧いてくるはずだ。このように一歩考えを進め、自分なりの工夫を深めながら実践していく人が「ギター上達」の道を歩くことが出来る人だ。この過程で大事なキーワードがある。
「自分が決める」である。その価値を認め、やってみようと「決める」事が最重要である。これがないと難しい局面でぶれたり、立ち消えになってしまうことになりがちだ。「決める」とは、「夢を掲げる」姿勢に似ている。そこに向かう熱いエネルギーがあなたをより高い地点へと必ず運んでくれるに違いない。
始めは与えられたことであっても、それをきっかけに
①自分で考え
②自分なりに工夫して考え
③あきらめず、自分のものにしていく努力の過程があれば、
借り物であったはずのものも、やがて自分の物として身についていくことになるのだ。『「まなぶ」は「まねぶ」こと』というのも、真似ることからスタートして自分のものになるまでじっくり考え、何度も何度も
工夫を重ねる過程を含んでこその言葉である。1か月が経って、今も「右手のフォーム」を意識しつつ工夫を重ね、練習に励んでいる人に心からの敬意を表したい。
2016.05.01
吉本光男